キャンプ施設が無い場所で何度か野宿をしたことがある。

入浴は途中の銭湯で済ませ、歯磨きと調理はポリタンクの水を使い、トイレは自分専用の穴を死角になる場所に掘るのである。はじめて野外トイレを体験したときは緊張して落ち着かなかったが、慣れるてくると大変晴れやかで気持ちが良い。

おいしい空気を吸い、遠景を眺め、さわやかな風を感じ、つい長居をしてしまうのである。

 

Aさんの家を設計していたときのこと。

建「広々とした雰囲気の家にしたいですね」。

私「トイレも広々としている方がいいですか?トイレと洗面所を一体にすれば 広々としますが」。

建「浴室との間をガラスで仕切れば、もっと広々としますよね」。

私「坪庭をつくって、坪庭との間をガラスにすれば、さらに広く感じますよ」。

建「庭を眺めながらなんて、気分爽快だね」>

 

 

Bさんの家を設計していたときのこと。

私「将来車椅子を使用する場合に備えて、トイレを広くしておきましょうか」。

妻「そうですね、でも広いと落ち着かなくて」。

夫「いざというときに、ぱっと手で扉を押さえられないとね」。

私「それでは、扉に手が届く奥行きにして、便器脇に将来簡単に取り外せる収 納を設けましょうか」。

 

 

Cさんの家を設計していたときのこと。

妻「トイレは2カ所にして下さいね。夫が朝長居するんですよ」。

夫「せかされてもね。トイレでは落ち着いて過ごしたいからね」。

妻「そうね。外出先でトイレに入るとほっとするわよね。1人になれる場所だからかしら」。

私「会社のトイレは、徹夜明けの仮眠場所にもなっていましたよ」。

妻「会社のトイレで、新人が泣く話しもよく聞きますよね」。

 

私「集中できるので、トイレに仕事を持ちこむこともありますよ」。

妻「えっ、我が家をトイレで設計しているのですか?」

私「いやあの、家はワンルームなので、トイレが唯一の個室なんですよ。家族が 寝た後、気兼ねなく電気を点けて仕事を続けられるので重宝しているのです。椅子付きの個室として使っているわけで・・・」。

 

 

屋外でも、屋内でも、トイレで長居をする傾向にあるようである。トイレに居ると、安心感と開放感を同時に味わえるからかもしれない。

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